「名刺デザイン」の全能性。
こんにちは。
デザイナーのモンブランといいます。
最近、務めている会社の名刺リニューアルを担当しました(実はこれでもゴリゴリのインハウスデザイナーなのです)
内容はデザイン、フォーマット作成、30〜40名分の名刺を管理製造する、といったお仕事。
その名刺を制作している時に、ふとこんな事を思いました。
振り返ってみれば、デザインの勉強を始めてから今の今まで、ずっと名刺のお仕事をしているし、毎回学びがあるような…!?
というわけで、今回は名刺をデザインを通して学んだり得ることが出来ることについて書いていきたいと思います。
「学びのキャンパス」としての名刺
一番最初に振れた名刺のデザインは大学での授業でした。
PhotoshopやIllustratorの基本操作を名刺の制作を通して学んでいくというもの。
自分の名前、電話番号、メールアドレスといった連絡先、あれば肩書き。
必要な情報を91x55mmのアートボードの中に配置していきます。
どこを一番見せるべきなのか、整理・整頓されたデザイン、余白の意味だったりとか、学んでいた当時は考えていなかったけど、名刺の実制作を通してデザインの基礎やそれを実現するためのツールの知識や技法を学んでいました。
デザイン、配色の知識を名刺を使って実践出来るのも良いところですね。
「オペレーション」としての名刺
当たり前ですが、名刺をこの世に具現化するには、印刷サービスあるいは印刷所へ入稿して、印刷・納品してもらう必要があります。
最近の入稿の仕方は様々。
PDFで入稿することもあれば、従来のようなIllustratorで入稿する場合もありますし、Illustratorの場合、入稿用にファイルのバージョンを下げる必要があるなど、入稿の方法に応じて様々オペレーションが必要になります。
デザインデータにしても、配置している画像は一緒に用意(画像をリンク)しているか、色はCMYKか、テキストはアウトラインをしているか(あるいは必要なのか?)など印刷物において必要なことは、名刺でも同様に行う必要があります。
名刺を通してでも、デザインから入稿・納品の、一連のオペレーティングの基本を全部学ぶことができるのです。
しかも、印刷するコストについても、加工などがなければ最低ラインは1,000円前後。
自分のものとして使うと考えて手の出しやすい金額で印刷を行うことが出来ます。
「ブランドデザイン」としての名刺
名刺をご依頼いただく時によくあるケースが、
ロゴとセットで依頼が来ることです。
会社の立ち上げの機会で制作依頼があったり、依頼された後に「あれ?これロゴ作ってあげた方が良いのでは…?」となったり。
また、純粋にロゴをデザインする時に、ロゴのイメージを具体化するためのプロトタイピング先として、名刺をモックアップに利用することが結構多い。
つまり、名刺をきっかけにブランディングに足を突っ込みだす、ということとも言えます。
ブランディングにおいて、名刺の存在は切っても切れない存在と、常日頃感じています。
「顔」としての名刺
さて、ここで会社での名刺デザイン業務の話に戻ってみます。
そもそも、何故今のタイミングで名刺のリデザインすることにしたのか。
弊社では、今まで即納激安のオンライン名刺サービスを使っていました。
もちろんそのサービスが悪い、というわけではないのですが、
即納であるが故に、印刷の品質や紙を選べないなど、数々のデメリットが多く存在していました。
それをデメリットと捉えるかどうか。
即ち今までデメリットになっていなかったこそ、スピード重視の名刺製造になっていたわけです。
しかし、会社の規模や事業感などが大きくなり、成長していく過程で、その姿にふさわしい名刺を作る必要がありそうとなったのが、今回の機会でした。
名刺は顔、と言われることがある。
目や鼻の位置、その人の表情が名刺における「デザイン」とするならば、紙質は「肌」にあたります。
遠くから見る分には気にならないけど、いざ対面で近づいていれば、肌荒れや毛穴、鼻の角質など、汚れが気になった時に相手の印象はどうなるでしょうか。
おそらく、大きくは変わらないでしょう。
ですが、場合によってはマイナスとなることもあるかもしれません。
顔をよく見たら「うーん...」となるわけです。
名刺における紙質はこの「肌」のような印象を与えることになると思っています。
今回の名刺制作は、デザイン以上に紙質の変更に重きを置いていて、対外的な理由以上に、社内のインナーブランディングとしての観点も持っています。
詳しくは伏せますが、去年くらいから自社サービスのリニューアル準備に奔走していました。
今回の名刺のリニューアルはこのリニューアルの観点が大きく。
リニューアルによる対外的な印象の変化以上に「僕たちは新しくなった」ということを名刺の紙質を通しての触覚で感じてほしい、ささやかなインナーブランディングを目指して名刺もリニューアルをしています。
自分で名刺を作った時やリニューアルをした時も、少しだけ「やるぞ」といった感じで心を引き締めるような気持ちになるように
名刺は「新たな自覚(決心)を持つきっかけとなるツール」としてもささやかな働きをしているように感じています。
「実験被験者」として名刺
前述で紙の種類について書きましたが、印刷物には紙以外にも折り、エンボス、金箔など様々な印刷加工方法があります。
名刺をはじめとした、印刷に少しでも関わった人は耳にしたこともあると思います。
こういった加工をA4のチラシなどに利用すると、かなりの高額になることがあります。
テスト刷りなんてしようものなら通常の印刷費の2倍以上かかることもあるかもしれません(もちろん印刷所によって変わってくると思うけども)
そこで名刺の出番です。
名刺は91x55mmのサイズ感ゆえに印刷・加工コストが物理的に下がるので、加工を試しやすいのです(そういう遊びもしやすい笑)
テスト刷りをすることによって加工よる見え方の違いや入稿での制約を精査することが出来ます。
例えば、箔押しは印刷可能な細さが決まっていることが多く、これは印刷所やサービスによって制約が異なることもあります。
こういった特殊な印刷や加工を低コストで試せるのも、
名刺制作の魅力です。
『デザイン全能性』の名刺。
今回、noteに書いた名刺のデザインで思ったことはこんな感じ。
・学びとしての名刺
└ デザインの基本を学ぶ
└ 制作→入稿→納品までのフローを学ぶ
・ブランディングとしての名刺
└ 自分を伝えるツール
└ 個としても、郡(社)としても
・実験体としての名刺
└ 特殊印刷を軽率に試す
└ コスパが良い。簡単に試せる。
昨今の情勢、リモートワークや名刺交換での接触の懸念などもあり、名刺の利用シーンはかなり減ってきています。
デスクに向かう時間が増えた今こそ、自分の名刺を作り直しながら、名刺制作から生まれるデザインの学びを改めて体験してみようかな、と想うモンブランなのでした。
おっぱい。
今回のnoteは音声版をPodcastでも配信しているので、良かったら合わせて聴いてくれると嬉しいです^^