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「完食」できる文章を目指す|「新しい文章力の教室」 読書感想

今回は唐木 元さん著「新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ」を読書しての気付きや感想を書きたいと思います。

この本には「完読(=文章をすべて読んでもらう)」導くかをゴールとして、Webメディア「ナタリー」での事例に基づいたノウハウが紹介されています。
うまいラーメンは何の躊躇もせずに「完食」できる。その「完食」をテキストで、どう実現するかをテーマとしています。


文章は「準備が9割」

「新しい文章力の教室」では「準備」「見直し(ブラッシュアップ)」「工夫とノウハウ」の3つの大枠で構成されていて「読み手にとって読みやすく、書き手にとってはコスパの良い書き方」が書いてある。
特に「書く前の準備」と「読み直し」について重点が置かれている印象だった。

「書く前の準備」としては、結論「いきなり文章を書こうとしない」ことが肝。

まず、記事として書きたい内容を箇条書きベースで可視化することから始め、そこから文章の「主眼」と「骨子」決めていく。
主眼というのは「テーマ」、つまり「結論」のことで、結論から書いて何故この結論に至るのかということをぶら下げる(→骨子)という構造を作る。

この構造について「新しい文章力の教室」では「構造化シート」として、主眼と骨子を紙に書いていき、これをベースに文章の肉付けを行っていく。

構造化をする際は上とは逆で、骨子となる話題を列挙してから主眼を定めていく

構造化シートの書き方
・箇条書きで話題を列挙する
・話題を眺めて「主眼」を見定め設定する
・主眼をベースに、話題の順番を考え整列していく

紙に書く理由は、いきなり文章を書こうとすることを防ぐため。
PCで構造化シートを書こうとすると、実際の原稿を書く現場と距離感が近い分、書くことをサボるようになる。
言い換えれば「いきなり文章を書こうとしない」ことを理解した上で、適切主眼と骨子を設定した書くということを徹底していれば、PC完結で書く分には問題無さそう。


「ほどよいグレー」まで、文章を削ぎ落とす。

文章を書き終えたら、次は文章の見直し。

「新しい文章力の教室」では「意味」「字面」「語呂」の3つの見地をそれぞれチェックしていく。つまり計3回書いた文章を見直すということ。

【意味単語、文章などが重複していないか
字面文章として読みやすいかどうか(漢字とかなのバランスとか)
語呂】オーディオとして「文章のスピード感」がどうか

主語と述語が成立しているか、単語の組み合わせによって読みにくさが生まれていないか、といったことを見直し、文章をどんどん削ぎ落としていく。

削ぎ落とすといっても、極限まで短い文章ではなく「完読」を目指すため、わかりやすく表現することが念頭。

そこで見直しの章では「ほどよいグレー」という言葉が出てくる。

例えば「弱肉強食」という漢字を参考として。
このままでは「文章が固く、可読性が悪い」という意図で「弱肉きょうしょく」のように、漢字とかなを敢えて組み合わせるような手法をとる。
※「弱肉強食」についてはあくまで例え。

"ほどよいグレー"にするには
◆ 単語、文章の重複を避ける
 └ "ということ"などの多用も避ける
◆ 漢字+漢字 や かな+かな のような使用を避ける
 └ 漢字+漢字 =固さ、かな+かな = 幼稚さ
 └ 共通して、読みづらさを感じる
◆ テキストのスピード感
 └ 実際に読んだ時に、語呂として変なひっかかりがないk

「ほどよいグレー」というのは、良い意味で「特徴のない」ということだと思う。
読者を「主眼と骨子」に集中させるために、それ以外の要素で「変なひっかかり」を生じさせないようにする意図を感じた。


文章のオリジナリティは「文体」にあらず

「新しい文章力の教室」の後半では、読者に完読をしてもらうための工夫の数々が書かれているが、
大事なことは「完読をされるためには」ということを念頭にしており、先でも書いた「主眼と骨子」「結論から始める(サビ頭)」「ほどよいグレーの文章」がこの本を読んで一番抑えたいポイントに感じた。

では、書き手としての「文章のオリジナリティ」はどう出せば良いのかという話だけど、それは「切り口」
「本人なりの感想やピックアップ箇所」ということだ。
構造化シートで言えば「主眼」にあたる部分ということっぽい。

オリジナリティは"切り口"
・自分の意見(何が言いたいのか)
・分析や議論などにおける観点や手法(これを見てどう思ったか)

その切り口、主眼を如何に読者に感じてもらい、読み進み、完読してもらうことが目的であって、そこに国語辞典のような厳格なルールは無い。


完読させる工程は「洗練されたデザイン」に近い

文章を削ぎ落とす工程は洗練された、機能的なデザイン性に導いていくデザイナーのブラッシュアップに近いものがあると感じた。
読む人のことを第一に考え、余分な装飾を捨て、どんどんと削ぎ落としていく。

この過程や、最終的なアウトプットについては、昨今デザイン界隈でも目にする「UXライティング」とは、ライティングする目的やそのプロセス・ロジックにおいて似て非なるものに感じた。

確証はないので、今後はUXライティングにスポットがあたった本なども探し、この本を相対的に見比べながら、自分も読者が完読できるような文章をデザインしていきたいと思います。


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